現代のエレクトロニクスは、1928年のBlochの固体バンド理論や1949年のShockleyのp-n接合理論が基礎になって発展してきており、半導体結晶中の電子や正孔の状態が理解されることによって、トランジスタやレーザーに代表される電子デバイスが生み出されてきた。現在、エレクトロニクスの発展に伴って、それらのサイズを極限に近い状態まで縮小することが可能になり、これまでバルク材料にはみられなかった量子力学的な現象が実際に観察されるようになった。次世代の電子デバイスや新たな極微デバイスを構築するにあたっては、このような低次元系の材料物性を正しく理解することが不可欠になっている。本研究室では、低次元系の材料として、ナノスケールの無機結晶材料にとどまらず、カーボンナノチューブやオリゴチオフェンなどの有機分子(生体機能性分子を含む)を研究対象にして、その機能および物性を主に走査型プローブ顕微鏡(SPM: Scanning Probe Microscopy)にて実スケール・実デバイス上で局所的に計測することにより、新規ナノデバイス開発に役立て最終的に実用化していくことを目指している。
機能性材料を電子デバイスとして応用し、その機能を発現させるには、基板上に機能を発現する形で配置し、電気的に電極と接続する必要がある。分子の場合であれば、コンフォメーションや配向状態を制御することが必要になる。本研究では、これらを実現するための手法の開発はもちろんのこと、デバイス評価のために新規の走査型プローブ顕微鏡技術の開発をしている。これらによって、実際に作製したデバイスを多角的に観察・評価していく。